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紀りんの館

紀りんの館

素直であるための祈り


 素直であるための祈り
   (フランシス・ジャム)


蝶はどんな風のそよぎにも従います、
聖体の祝日の行列で、やさしい子どもたちが
あなたにむかって投げかける花びらのように、
神さま、朝です。祈りの声はもうあなたの方へ、
花に似たこの蝶とろもにの雄鶏の刻とともに
石割り人夫の槌音とともにのぼっていきます。
地面もひび割れる七月の
みどりに輝くプラタナスの葉陰で
姿を見せない蝉が、あなたの全能を讃えて
精一杯の声で孜々として鳴きつづけています。
水辺の暗い茂みでは、つぐみが不安げに
長い口笛を吹こうとしますが、すぐやめます。つぐみは
自分が何におびえているのか知りません。とまっていたのが
突然飛びたって、地面すれすれに、一直線に、
誰もいない方へ飛んでいってしまいます。

神さま、穏やかに今日もまた、
昨日のように、今まで通りに、生活が始まります。
あの蝶のように、あの働く人たちのように、
太陽を食べる蝉や、
葉陰の暗い涼しさのなかに隠れるつぐみのように、
おお、神さま、ぼくにもできるだけ素直に
生活を送るようにさせてください。        (手塚伸一 訳)


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